天然染料・染色技法について

インド藍 インド原産

キアイと呼ばれる マメ科 コマツナギ属の植物の葉を収穫し、アルカリ水を加えて抽出、沈殿を繰り返し乾燥させた物を染料として使用しています。日本における藍染めの歴史は古く、江戸時代から庶民に愛され親しまれてきました。野良着、仕事着、夜具類、産着等の用途の他、蛇などの虫よけ、消臭、殺菌作用等の効用もあるとされています。

インド藍を使用する理由

国産の藍(本藍)では、キアイと同じく、藍色の色素の元となる「インジカン」が含まれるタデアイ(タデ科)という植物の葉を発酵させて染料液を作り、染めていきます。
主な産地は徳島県ですが、タデアイの産地、生産量が減少し続けている現代において中量生産、そして日常手の届く範囲の商品価格に対応するために、宝島染工では安定した収穫があり、純度が高いインド藍を使用しています。

Living Blueの取り組み

ベンガル地方(現バングラデシュ)の藍(インド藍)は、 “True Bengal”といわれ、深く美しい色や高い定着率で高い評価を得ていました。それを固めた藍片は、商品として欧州で取引され、通貨的な価値をもつこともあったそうです。しかし英国の植民地化以降は搾取の手段として藍栽培が強いられ、藍産業は戦後急速に衰えたといわれています。
2005年に国際NGOのCAREが地元政府と共に、政府の土地の貸出し、藍栽培の奨励政策を打ち出し、地元農民たちが収入を得る手段として藍栽培を復活させました。その中でLiving Blueがプロジェクトとして発足し、地元の生産者の組織化、意思決定に基づく生産体制を確立し、公正な価格での販売活動を行い、作り手および地域に還元することで持続可能な産業として継続する仕組みを確立しました。
現在では3000人もの藍農家、染色技術を持った職人がメンバーとして参加し、バングラデシュ北部の周囲の村に広がり生活の安定をもたらしています。
私たちはLiving Blueのプロジェクトに賛同し、Living Blueの藍を使用する取り組みを始めています。

ミロバラン インド・ビルマ原産

モモタマナ科の樹木で、実を染料として使用しています。
ピロガロールタンニンと云う色素を含みます。

蘇芳(すおう) インド・マレー半島原産

マメ科の小高木で、芯材から色素を抽出した物を染料として使用しています。中国から渡来したとされており古い書物の、随所にその名前が登場する事から、古代より上層階級の重要な服色の一つとされてきた事がみうけられます。江戸時代になると庶民の染料として、楊梅、藍と並んで広く使用されるようになりました。ブラジリン、ブラジレインと云う色素を含みます。

西洋茜 地中海沿岸の南ヨーロッパ・西アジア原産

茜科の多年草で、別名を六葉茜ともいいます。
根を染料として使用しています。
アリザニン、プルプリン、ムンジストン等の色素を含みます。

渋木 東南アジア原産

ヤマモモ科の常緑高木の樹皮を染料として使用しています。別名を楊梅、山桃ともいい古くからある染料ですが、特に江戸時代から広く使用されるようになりました。タンニン、ミリセチンと云う色素を含みます。

ビンロウジ インドネシア、マレー原産

ヤシ科ビンロウ属の常緑高木で実を染料として使用しています。染料用途の他、漢方薬としても用いられます。また、東南アジア・南アジアでは噛む嗜好品として古くから人々に親しまれています。

カテキュー

マレー半島、スマトラ、ボルネオ原産。
アカネ科の小木で葉や若枝を染料として使用します。
カテコールタンニンという茶褐色の色素を含み、
染色用途のほか、阿仙薬の名で漢方薬としても用いられます。
タンニンを多く含むため泥染めの下染としても使用しています。

宝島染工の泥染めではカテキュー(上記参照)で下染を行い、鉄分を多く含む、地元大木町の泥で反応発色して定着させます。カテキューに含まれるタンニン分と泥土に含まれる鉄分の反応によりタンニン鉄の茶に染まります。日本でも最も古い染色方法の一つとして、奄美大島が産地として知られています。

日本人には書道や水墨画で馴染み深い墨は松など油分の多い木と菜種油などの油脂を不完全燃焼させて得た煤と膠(動物の骨や皮に含まれるゼラチン質状のもの)を練り合わせて作ったものです。墨が染料に用いられはじめた時期は不明ですが、布を染めたのは室町時代以降であると言われています。墨汁の濃度によって仕上がりをコントロールし、色の濃淡を表現します。

【染色技法について】

私たち宝島染工では、日本の伝統的な染色技法である「防染」の技術のみを用いて、手染めで染色を行っています。

防染とは、糸でくくったり糊や・蠟などを付着させたりして染液がしみこむのを防ぎ、他の部分を染色して模様をあらわす方法で、古来より﨟纈(こうけち-絞り染め)・夾纈(きょうけち-板締め)・纐纈(ろうけち-ろうけつ染め)の三纈と呼ばれた基本技術があります。私たちはこれらの技法を組み合わせたりアレンジしたりすることで、伝統的な手作業を継承しながら現代の市場に合う染色加工を行っています。

●絞り染め

糸や紐で布をくくったり,縫ったりして染液が染み込むことを防ぐことで模様を表現する技法。発生は古くインドとされ,中央アジア,中国を経て7世紀の飛鳥時代に日本に伝えられた。絞り方や絞る材料、大きさ、間隔などにより柄を表現することができる。海外でもshiboriとして知られる。

●板締め

絞り染めの一種で生地を折りたたみ、2枚の板の間に挟んで強く締め、圧力によって染料の浸透を防いで文様を染め出す染色法。生地の畳み方、板の大きさや形、配置の仕方などにより柄が表現できる。絞り染めに比べ幾何学的でシャープな線の表現が可能。

●ろうけつ染め

蝋で布を部分的に覆って防染することにより,模様を染めあらわした染色技法。古代は主に蝋を型につけて織布に移す方法を使用していたが、現代のろうけつ染めは、インドネシアのバティックなどを発端とするもので、型を用いず、蝋を筆につけて模様を自由に描いて行く方法を用いることが多い。

●型染め

染めたい柄を彫った型紙を使って布の上に糯米と米糠で作った防染糊を置き、染液をつけた刷毛で染めるか又は染液に浸して染め、水洗いで糊を落として模様を表す染色方法。