kiitos 大山真司さん 大山愛子さん(後編)

捨てるものから
生まれてくるもの、
つながっていくもの。

宝島染工のカカオ染めによる新しいコレクションのテーマは、「カカオでつながる」。
前編に続き、ビーントゥバーのチョコレートブランド〈kiitos〉の大山真司さん・愛子さん夫妻にご登場いただき、
カカオ染めが生まれるきっかけやこれからの展望について話します。

画像提供 kiitos

──〈kiitos〉の最初の工房は廃校になった海の近くの小学校だったそうですね。

【真司さん】当時の工房は、「日本一海に近い小学校」と呼ばれた旧鹿屋市立菅原小学校を再利用した「ユクサおおすみ海の学校」の中にありました。海と山と空に囲まれた、それはもう大らかですばらしいロケーションの中、チョコレートを作っていました。

──その工房を初めて訪れた時、山積みになっているカカオ豆の殻や薄皮が目に入りました。訊いてみると、破棄するしかないという。これを染料として使えたらいいのにと思ったんです。カカオ豆がチョコレートになって、使われなかった殻は洋服の染料になって……そうすると、なんだか納まりがいい。最後まで使い切るのって、気持ちがいいでしょう。

【真司さん】ええ。輸入したカカオ豆の中にはいびつな形のものや虫食いのものがあるので、おいしいチョコレートを作るために、まずはそれらをハンドピックで丁寧に取り除く必要があります。こうして質の良い豆だけを選別したらオーブンで焙煎して粉砕し、カカオの実と殻を分けるんです。

その後、さらに豆の状態を見ながらピンセットでカカオの薄皮を取り除く作業を3、4回は繰り返して、ようやく豆の下準備が終わります。この下準備の段階で出る殻や薄皮などは、多い時で麻袋の4割近くを占める量になり、産業廃棄物としてお金を払って処分するしかなかったんです。
それが染料になるなんてワクワクするお話しでした。

【愛子さん】私たち宝島染工さんの大ファンだったのでうれしくて。ただ、自分たちでも以前、カカオの殻を使って袋を染めてみたんですが、なかなか思うような色が出せなかったんですよね。他の染料よりも扱いが難しくはありませんでしたか?

──2、3年ずっとテストを繰り返して、ようやく“カカオ”のイメージに近い色が出せるようになりました。こちらが試作品。生地もしっかりとした厚手のものを選んでいます。

【愛子さん】わあ、ここまでしっかりカカオ豆をイメージできる色が出せるなんて、さすがです!

──今回は、カカオの殻からアルコールで染料だけを抽出し、「引き染め」という技法で染めています。「引き染め」は着物の帯とか、お店の暖簾や大漁旗といった大きめな生地を染める際に用いられるんですよ。

【真司さん】普通に染めてもこうはなりませんよね。よく見たら無地と柄と2パターンあって、こっちは炭でうっすらとおぼろげに柄が入っている。あの捨てるはずだった殻がこんなカッコいい洋服になるの⁉って感動しています。これはもう、カカオそのものを纏っているって感じ。

【愛子さん】すごくシンプルなパターンなのに、袖を通すと想像以上に表情が豊かになるんですね。セットアップでもいいけど、上下別々で着ても良さそうだし、男性でも違和感なく着られるかもしれません。うちのメンバーにも似合いそうだよね。

【真司さん】みんなすごく喜ぶと思うな。僕も妻もいくつになっても着られる洋服が好きで、しかも、少しくらい破れても繕ったらまたそれが味になって様になる……そんな洋服に愛着があります。宝島染工の洋服がまさにそうで、染めなんだけど現代的なセンスがあってどんどん味わいが深くなるでしょう。

──今回のカカオ染めへの挑戦をきっかけに、日本ビーントゥバー協会(福岡県飯塚市)のご協力のもと、各地のビーントゥバー工房から出る廃棄用の殻を譲っていただける話もまとまりつつあります。

【真司さん】ビーントゥバーチョコレートを作っている方なら、殻を廃棄することに少なからず問題意識を持っていると思うから、再利用のご提案はありがたいです。もちろん、僕らもずっと協力したいな。

──今回みたいに仕事とかビジネスではなく、ごく自然な流れで思いがけない取り組みが生まれる。そこがおもしろいんですよね。最後に、これからの〈kiitos〉さんの展望は?

【愛子さん】〈kiitos〉を地元の方たちに愛されるショップに育てて、この街の日常でチョコレートを楽しんでもらいたいですね。

【真司さん】僕らは鹿児島、鹿屋が大好きだし、同じように、自分たちの地元で楽しみながらオリジナリティのある試みにチャレンジしている人たちも多い。そういう仲間と交流しながら、互いに応援し合える関係性が築けたらと思っています。鹿児島には「かたすっど」という、「肩貸すよ」っていう意味の言葉があるんですが、困ったときは互いに「かたすっど」でやっていこうよって。

 

──うん、「かたすっど」、いい言葉ですね。今回はありがとうございました。

 

 

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